こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの吉田です。
突然ですが、皆さん幸福ですか!
…何を言ってるんだコイツは、っていう感じですね^^;
この「幸福」という言葉、最近よく聞きませんか?
私の中では、2008年の金融危機以後に特に意識され始めた言葉だなと思います。「幸せの国」ブータン国王の来日とか、国内総生産(GDP)に変わる国民総幸福(GHP)の概念の提唱といったことが話題になっていましたね。
しかしここ数年、あらためて静かな、じわじわとしたブームのようになっていると感じます。
恐らく、AI(人工知能)を始めとする各種テクノロジーの発達、SNSなどの普及に伴って、いよいよ人間の幸福、個人の幸福、家族の幸福、社会の幸福について意識せざるを得なくなってきているんだと思います。
私は「自分の幸福を追求することが家族や社会の幸福につながる」と思っているので、この流れは結構ウェルカムです。
この「幸福」とよく似た言葉で、「生きがい」がありますね。
この両者は似ているようでニュアンスが違う。生きがいを求めた先に、幸福がある。そんな感じでしょうか。
幸福(well-being)と生きがい(ikigai)の違いですね。
そう、ikigai。…ikigai??
実は世界では、生きがいのことは「ikigai」として通っているのですね。そして最近、この「ikigai」を発信している外国の方が増えていると感じるようになりました。
そこで、ちょっと無理やり感はありますが、今回はこの「ikigai」について取り上げてみたいと思います。
「ikigai」をビジュアル化してしまった人々
そもそもどうして外国で「ikigai」が広まったのかについては、こちらの記事が分かりやすいので紹介します。
そもそも「Ikigai」という言葉が世界に広く知られるようになったきっかけは、一冊の本でした。スペイン人のFrancesc Miralles氏とHéctor Garcia氏(2004年より日本在住)が共著し、2016年春に出版された「ikigai」という本があるのです。欧州では早い段階で翻訳もされ、その斬新な内容が話題を呼びました。筆者の住むオランダでも2016年のうちに現地語に訳されベストセラーになっています。
その人気が世界規模に広がったのは、2017年夏。英語版の出版にあたり、イギリスのBBCや世界経済フォーラム (本部ジュネーブ)のブログで「ikigai」の考え方を取り上げたことが大きなターニングポイントとなりました(直接の本の紹介は無し)。それが追い風となり、「Ikigai」本の存在も広く知られるようになったのです。
長寿で知られる沖縄の大宜味村を取材したことで得られた知見。元気で生き生きと暮らしているご長寿の方々の、その長寿の秘密は「生きがい」を持っているからだという結論に至ったようですが、欧米ではその感覚が言葉として無かったのでしょうか、生きがいがそのまま「ikigai」となったようです。
しかし、この言葉がより広がった原因は、「ikigai」を分かりやすく定義したこちらの図のおかげではないかと思います。
ikigaiダイアグラムと呼ばれる図ですね。
4つの円があって、それぞれに交わる部分があって、すべてが交わる中心に「ikigai」がある、という構図になっています。
さらっと説明しますと、まず大きく4つの要素があります。
- あなたが大好きなこと
- あなたが得意なこと
- 世間から必要とされること
- お金を払ってもらえること
それぞれ隣り合う円が重なるところでは「情熱」「使命」「専門性」「天職」が必要とされる。でもそれだけでは生きがいを感じるには不十分で、これら4つが重なったところで「ikigai」が得られる、というものです。
お~なかなか西洋的だな~と、私なんかは思いますが、これはこれで面白い考え方だなと思います。
ただですね、日本人からしたら「これが生きがいか?」という疑問は持つんじゃないでしょうか。何というか、不自然ですよね。
そう思うのは私だけではなく、外国の方の中にもそう思う人たちがいるようです。
より本質に近づいたikigai図へ
先ほどの図がなぜ不自然に感じるかというと、あの図がある米国の「起業家」の手によって作られたからでしょう。
元々は、あるスペイン人占星術師によって発案されたものですが、もう少し違ったものでした。これにインスパイアされた起業家のMarc Winn氏が、より分かりやすく、中心に「ikigai」という強力なワンワードを載せて発信したことで、爆発的にシェアされた(今ドキでいうバズった)ということです。
Googleで「ikigai図」と検索すると、ほとんどこのような図で埋め尽くされていると思います。日本でも若い方が中心でしょうか、熱心に取り上げています。確かに、ワークライフバランスの観点から仕事と人生を考えたい方にとっては良くできた図だと思います。
ところが「こんなのは本当の意味の生きがいじゃねえ!」と憤る日本通の外国の方もいまして、これをより日本人にも通ずる感覚で図を再編してしまいました。
それが、下の新たなikigai図です。
これはNicholas Kemp氏によって作られていますが、ほとんどは過去に生きがいを研究してきた日本人によって体系立てられたものを整理したものです。
これもさらっと説明すると、大きな4つの円には、
- 価値あると感ずるもの
- 趣味や興味あるもの
- 役割や関係性
- 実存
といったものになり、隣り合う円が交わるところは、「つながりと調和」「感謝と貢献」「習慣と小さな悦び」「創造性と没頭」となります。
さらに3つの円が交わるところは「意味」「目的」「自由」「成長」と、より抽象度を増していきます。そして最後の中心部分はなんと「日常の、何でもない生活」となります。(超訳です)
最初のikigai図は、4つのことを達成しなければ(しかもお金絡みのこと)、生きがいは感じられないとされていましたが、この図をみると、至るところに「生きがい感」を読み取ることができると思います。生活のあらゆるところから、生きがいを感じられるのですね。
また中心の「Daily Living」は「Self-Actualization」、つまり「自己実現」と読み替えることもできるとしています。つまり中心から外へ、と同時に、外から中心へという流れもあるわけで、これらがグルグルと回ることで生きがいがより高まっていくイメージなのでしょうか。
これで私たち日本人にも、かなり馴染み深いものになりました。まあ私が知る限り、西洋であってもきちんと幸福を研究しているような人は、最初のikigai図よりも後者に近い感覚が多いように思います。
ライフプランを作る時も、ぜひ「ikigai」を意識して
さて私はファイナンシャル・プランナーなので、ご相談者の夢や生きがい、幸福といったものを間接的にサポートする立場になります。
ライフプランやファイナンシャル・プランを作る際は、長期的なプランを考えることになります。つまり、ご相談者の人生そのものに関わってくるわけです。ですから、どこかでその方の「生きがい感」「幸福感」というものに触れることになります。
もちろん私は「○○さんの夢は何ですか?」とか「○○さんの感じる幸せって何ですか?」などと聞くことはありません。しかし、一緒にプランをつくったり相談することによって、そこには、ご相談者の「生きがい感」「幸福感」が自然と反映されているものだと思っていただければと思います。
そんなわけで、今や世界でも通用する「ikigai」という言葉についてご紹介しました。
最初のikigai図も決して悪いものではなく、使いようだと思います。せっかくフレームワークを作ってくれているので、活用できるところは活用していきたいですね。
そしてより重要なのは、こんな「ikigai」というものが、どうして世界で広く認知され始めているのか、いまどういう世界観を時代は求めてきているのか、こんなことを考えるきっかけになればさらに面白いと思います。