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金融リテラシーって本当に必要?

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの吉田です。

先日、日経新聞に興味深い記事が掲載されていました。

英国のISA(個人貯蓄口座)についてです。

日本経済新聞
[FT]英の貯蓄改革案、物足らず ヘレン・トーマス ビジネス・コラムニスト - 日本経済新聞 英国のハント財務相は、ISA(個人貯蓄口座)と呼ばれる税優遇制度の改革案を示し、国内株式市場にもっと資金を呼び込もうとしている(編集注、ISAは日本の少額投資非課税制...

英国のISAというのは、日本のNISA制度のお手本になったものですね。

今回はそれに絡んでちょっとお話ししたいなと思います。

目次

英国の資産運用事情

ISAとは、英国版NISA。つまり預金利息や譲渡益が非課税の投資・貯蓄口座です。

英国ではこのISA口座保有者は約2,200万人です。英国の16歳以上人口がだいたい5,400万人くらいですから、16歳以上人口の40%くらいが口座保有しているということですね。

日本のNISA口座数(一般・つみたての合計、ジュニアNISA除く)が1,940万口座くらいです。※2023年6月時点

18歳以上人口比でいくと18%くらいなので、さすが英国、本場は違うねぇというところでしょうか。

ちなみにざっと英国ISAの仕組みをお伝えすると、ISAには4つのタイプがあります。

  1. 預金型ISA (Cash ISA)
  2. 株式型ISA (Stocks and Shares ISA)
  3. 金融型ISA (Innovative finance ISA)
  4. 生涯型ISA (Lifetime ISA)

(あてている日本語訳は適当です!正式な日本語訳があるかは知りません)

毎年4月5日頃から課税年度が始まりますが、単年度ごとに上記のどのタイプを選ぶか決められるのですね。

開設できる年齢は、預金型は16歳以上、それ以外は18歳以上となっています。

非課税上限は単年度で20,000ポンドとなっています。記事執筆現在1ポンド=187円くらいなので、日本円で374万円ほど。新しいNISAでは2つの投資枠合わせて360万円ですから、おおよそ同じくらいですね。

とまあそんな感じなわけですが、ポイントは、

預金型ISAの保有割合がISA全体の3分の2であること

です。

日本でも企業型の確定拠出型年金になると、元本確保型商品(預金・保険)を選ぶ割合がとても多いですが、英国でも似たような傾向にあるのですね。

ISA口座全体の3分の2ですからね。これはなかなかのものです。

そして記事によると、英国コンサルティング会社の調査では、預金型利用者のうち7割は株式型の利用を考えたこともなかったのだそうです。

え?!まじで??という感じですね。

「そもそも、確定拠出型年金の加入者の8割は投資先を確認した事すらない」

ウソでしょ???

そうなんですよ、英国ですらそんなもんなのです。

日本人は金融リテラシーが低い!と言われますが、これを見る限り英国でもそんなに大差ないですし、それは英国に限らずアメリカでも似たりよったりです。

そうなんです、似たりよったりなんですよ。

じゃあ、そこまでして金融リテラシーを上げるとか、資産運用立国にならなければならないとか、そんなこと考える必要あるんでしょうか?

金融リテラシーを上げる意味

付け加えておくと、預金型ISAで運用できる銀行金利は、1年物で5%を超えています。

イギリスのインフレ率は2023年10月は4.6%だったようですから、通年で物価上昇率よりも高い利回りが得られれば、それは賢い選択だと言えます。

とはいえ、預金型利用者のうち7割が株式型の利用を考えたこともない、ということは、賢い選択をしているというよりも、むしろリスク回避傾向が強いということを表しているのだろうと思います。

英国内の株式にあまり期待していない、魅力的でないというのはあると思います。また英米は金融業界の本場ですから、かえって国際分散投資といった考え方が馴染まないのかもしれません。

それにしても。

つまりここから分かるのは、金融リテラシーを上げなければならない!といっているのは政府・金融業界とそれを取り巻く関係業界だけということです。

それはそうです。金融に関心を持ってもらえれば商売や事業がしやすくなるのですから、業界が躍起になるのは当たり前。

問題は私たち一個人にとって、金融リテラシーを上げるとはどういうことなのか?それは生活にどういう影響を与えるのか?ということです。

金融リテラシーを定義する

金融リテラシーは、有識者・関係省庁・団体などが集まって議論された末に、以下のような4つの分野で適切な考え方や知見を身につけようと定義されました。

  • 家計管理
  • 生活設計
  • 金融知識等の理解と適切な利用
  • 外部知見の適切な活用

結構幅は広いのですが、端的に言うと「日々のお金管理をしっかりして、ライフプランも考えて、きちんとしたアドバイザーの意見も聞ければ、常識が身についたうえで変な欲に惑わされにくくなりますよ」ということです。

これまでであれば、年齢を重ねるうちに自然と身につけていたもの(必要に迫られ身につけていたこと)を、あらためてカリキュラム化してくれているわけですね。

つまりこれらはどちらかというと、日常生活において最低限身に付けておきたい生活スキルのひとつと言えるわけです。ですから、安心安全には繋がるけれども、豊かになるというのとはちょっと違う。

それよりも、金融リテラシーの向上がもたらすものは、「結果として、健全で質の高い金融商品の提供の促進にもつながる」ということなんです。これは金融リテラシーの定義にも記載されていることです。

実はこっちの方が意味は大きいと私は思っています。

先ほど私は英国の資産運用事情と金融リテラシーを直接結びつけて語っていましたが、本当は運用の仕方とリテラシーの高低がダイレクトに結びつくわけじゃない。やはりそれは別のものです。

しかし全体の金融リテラシーが向上しないと、質の低い金融商品が跋扈してしまうのは結びつきます。

判断する力を養わないと、質の低い金融商品のみならず、詐欺まがいの手口に掛かることや、金銭欲や誘惑に負けることにも繋がるのですから、やはり身に付けておいた方が良い。

その点、金融リテラシー向上を金融業界が言っていること自体は、一種の自浄作用も働いているということですから、歓迎すべきでもあります。

さて英国も日本も銀行預金率が高いというのは、リテラシーが低いわけではなく、ある意味人として自然なことだろうと思います。

そうまでして株式や投資信託で運用しなければならないことはない。それよりもやるべき事はたくさんある。そう思うのは当たり前ですから。

FPや金融業界にいると、そのことが見えなくなってくるんですよね。そういうことじゃないんだよな~というのを一旦わかる、というのは大事ですよ。

ということで、ちょっとまとまりのないボヤキのような話でした。

それではまた。

政府広報オンラインで、金融リテラシーのもう少し詳しい内容を書いているので興味があればそちらを見てくださいね。

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