こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの吉田です。
今回は「遺族年金」について書きたいと思います。
公的年金には老後のための老齢給付だけでなく、障害給付や遺族給付があります。
これは相談を受けていてとても多くみられることですが、皆さん遺される家族のためを考えて生命保険についてはあれこれ吟味するものの、遺族年金についてはほとんど考慮されることがありません。
これは今も昔もずっと変わらないですね。
正直、もったいないと思います。
ほとんどの方は公的年金被保険者のはずですから、何となくでも公的年金についてイメージを持っておくといいと思います。
とりわけ生命保険の設計を考えるうえでは、遺族年金のちょっとした知識があるだけで、随分と保険の節約にもつながりますので損はないと思います。
ということで、今回は本当にざっくりと簡略化して、イメージだけは持てるように遺族年金の説明をしたいと思います。
遺族年金の仕組み
説明を簡略化するために、最もよくあるケースで考えましょう。すなわち、
●子どものいる夫婦(共に会社員)世帯で配偶者が亡くなった場合どうなるか?
でみてみたいと思います。
皆さんご存知のように公的年金には、強制加入である「国民年金」と会社員や公務員らが加入する「厚生年金保険」があります。遺族給付はこれらに対応するように「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」に分けられます。
ここでは亡くなった人に関する遺族年金の要件はクリアしているとして、遺族基礎年金と遺族厚生年金を受け取れるものと考えてみましょう。
ではそれぞれ分けて説明しますね。
遺族基礎年金
まずは遺族基礎年金です。
遺族基礎年金を受け取れる人は?
ご主人が亡くなってしまった。その場合、配偶者である妻は遺族基礎年金を受け取れるのですが、でも条件があります。それは、
18歳到達年度の末日までの間にある子がいることです。
なんとややこしい表現でしょう。
わかりやすく言うと、一般的に高校卒業するまでの子がいれば、遺族基礎年金を受給することができるという事です。
例えば高校3年生のお姉ちゃんと中学2年生の弟くんがいるとします。この場合、中学2年の弟くんが高校を卒業するまでの間、奥さんに遺族基礎年金が支給されるというわけです。
なるほど。じゃあ子どもが全員高校卒業してしまったらどうなるの?
はい、遺族基礎年金の受給権はなくなります。
つまり遺族基礎年金を受け取れるのはここまででお終いという事です。
ちなみに奥さんが受給するケースで書いてますが、もちろん奥さんが亡くなった場合はご主人が受け取れることになります。
遺族基礎年金の額は?
受け取れる遺族基礎年金の額ですが、これは定額になってます。
いくらかというと、満額の老齢基礎年金と同額になります。令和6年度でいうと816,000円。これは年間の額です。
これに、子どもの数に応じて加算額があります。その額は1人あたり224,800円(令和6年度価額)。
先ほどの子ども2人の例でみると、234,800円✕2=469,600円となります。
となると816,000円+234,800円=1,285,600円。
つまり先ほどの例のように高校生と中学生の子どもを持つ世帯で、ご主人(奥さん)が亡くなった!という場合には、月額約10万円程度、遺族基礎年金から受け取れるのですね。
年金の額というのは毎年、物価や賃金の変動に伴って改定があります。とはいえ極端に増減するわけではありませんので、上記の額は大まかなイメージを掴んでいただくのに丁度良いと思います。
子の加算についてですが、3人いらっしゃる場合には、3人目の子から78,300円の加算額となります。
ということで、ここまでをイメージ図にしてみると…
こんな感じです。
縦の額を合計すると年金額が出てきます。長男が高校を卒業するまでは3人分の子の加算が受け取れ、長男が高校卒業後は3人目の子の加算が無くなり、長女が高校卒業後は2人目の子の加算が無くなり…という具合。
なんとなくイメージできますか?
遺族厚生年金
では次に遺族厚生年金に移りましょう。
個人事業主やフリーランスの方は遺族基礎年金しか受け取ることができませんが、会社員や公務員の方は遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受け取る権利があります。
ここでも、亡くなった方については遺族厚生年金の要件を満たしているものとします。
遺族厚生年金を受け取れる人は?
子どものいる夫婦(共に会社員)世帯をモデル例にしていますので、この場合だと、
○妻
○55歳以上の夫
が受け取れることになります。
残念ながらご主人については55歳以上という年齢要件があるんですね。
ちなみに遺族の範囲としては、子・父母・孫・祖父母まで入りますが、ここでは割愛します。
遺族厚生年金の額は?
遺族厚生年金の額は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分年金額の4分の3に相当する額となっています。
短期要件とか長期要件とかややこしい計算式などがありますが、ここではいったん全部端折ります。
とはいえ、老齢厚生年金の報酬比例部分??なんのこっちゃ?一体いくらなの?となりますよね。
とりあえず目安を知るのに一番わかりやすい方法は、皆さんのお手元にある「ねんきん定期便」を使うことです。
このねんきん定期便に「これまでの加入実績に応じた年金額」という欄があって、ここに老齢厚生年金額が記載されています。
これまでの加入実績に応じた年金額になりますので、この老齢厚生年金額を3/4して頂くと、大体の遺族厚生年金額の目安になります。
ただし厚生年金保険加入期間が300月(25年)に満たない人の場合は300月として計算することになっています。
厚生年金は加入期間と標準報酬額が計算の元になるので、例えば加入期間が10年くらいの方だと年金額が少なくなりますよね。そうなると遺族補償としては心許ないのですが、ここでは最低300月でみてくれます。
すると、例えば180月の加入実績のある方だと、
これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額✕(300月/180月)=目安となる遺族厚生年金額
となります。
これもねんきん定期便の「これまでの年金加入期間」で分かりますから、確認してみてください。
中高齢の寡婦加算というのも知っておこう
遺族厚生年金には中高齢の寡婦加算というものもあります。
40歳以上65歳未満の妻が受け取れます。
遺族基礎年金では、子どもが18歳到達年度の末日、つまり高校を卒業してしまい、該当する子どもが誰もいなくなったら受給権は無くなるんでしたね。
しかし遺族基礎年金を失権した後、今度はこの中高齢の寡婦加算が受け取れるというわけです。
ありがたいですね。
加算額は遺族基礎年金の基本額4分の3相当、令和6年度価額で612,000円となります。
あくまでも、遺族基礎年金を受給していた妻がそれを失権した後に受け取れますので、遺族基礎年金と中高齢の寡婦加算はダブって受給することはありません。
その他要件はありますが、ざっくりとご理解いただければ大丈夫です。
遺族年金でどれくらい給付があるかシミュレーションしてみよう
さて遺族基礎年金と遺族厚生年金が大体掴めたところで、これらをまとめて図として表してみましょう。
こんな感じです。(スマホの方は拡大してみてくださいね)
いろいろな条件・要件がまだまだあって、この記事だけだと誤解を与える部分もたくさんあるのですが、ひとまず骨子を掴んでいただくという趣旨でまとめました。なんとなくでもイメージを持っていただけたら十分です。
ここまでいかがでしたでしょうか?公的年金から遺族給付は意外とあるという感想を持つ方も多いと思います。
生命保険で死亡保障を考えるときには、まずこの公的年金からいくらくらい自分は給付されるのか、そのことを考慮に入れると設計しやすいですよね。すると、足りない部分にのみ生命保険で賄うという発想をすることができます。
自分の場合どうなのか?が分からない場合はご相談ください。
では今回はこれで。