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物価上昇について分かりやすく

こんにちは、ファイナンシャル・プランナーの吉田です。

今回は物価上昇、インフレについてあれこれ書いてみようと思います。

ここのところ、米国を中心に消費者物価上昇のニュースがよく取り上げられています。私たちの暮らしでも、ガソリン価格の上昇、食品の値上がりなどが実感としてありますよね。

米12月CPI前年比7.0%上昇、約39年ぶりの高い伸び 利上げ圧力高まる(ロイター2022.1.13)

ユーロ圏インフレ率は過去最高の5%、予想外の加速でECBに試練(ブルームバーグ2022.1.7)

国内企業物価指数の前年比、12月は過去2番目の伸び率(ロイター2022.1.14)

〇〇年ぶり~とか過去〇番目の~などといった歴史的な物価上昇の趣になってきていますが、はたしてこの基調は本物になってくるのでしょうか。

とその前に、そもそも物価上昇とは何か?について確認していきたいと思います。

私なりの解説の仕方になりますがご容赦ください。(異論は…知らない笑)

目次

物価上昇とは?できるだけ分かりやすく解説

物価上昇を要素分解すると

  • 需要側の要因
  • 供給側の要因
  • 貨幣要因

が経済学的には挙げられると思います。

現在の物価上昇は、原油高・原材料費の高騰・人手不足などによる供給側の要因によって起こっているとされていますね。

もちろんある要素ひとつだけが独立して影響を与えているわけではなく、実際には3つの要素が複合して影響を与えていると考えるべきでしょう。

と、それはともかく。

物価上昇、インフレとは何か。

これをとにかくできるだけ分かりやすく、噛み砕いて言うと、下の図のようになるでしょうか。

図1:物価上昇の例

100円のものが130円になりました!という場合を想定しましょう。まさに物価上昇ですね。

この商品は昨今の流れをうけ、原材料費の高騰により原価が上がったとします。例えば70円から100円に。

するとこの商品の粗利益は30円で、物価上昇しても変わらないわけですね。利益は変わらず、売り値だけが変わる。

原価の上昇分だけ売価が変わるのならば、これが150円であれ、200円であれ、企業の利益は同じ。逆に原価が下がっただけ売価が下がる場合なら、90円であれ70円であれ、これも企業の利益は同じ。

結局、見た目の”表示価格”が変わっただけで、中身は何も変わっていません。

仮に、物価上昇率と同じだけ賃金も上昇したとすると、生活には何も影響しないわけです。

「この商品、昔は100円だったのに、今じゃ1000円だ。」としても、賃金も10倍になっているので生活感としては何も変わらない。見た目の価格が1000円になったね、という感慨だけが残ると。

原価上昇率ほど価格を上げられない場合

しかしインフレーションの初期にあっては、普通、そんな急激に売り値は上げられないものです。企業努力によってギリギリ利益が出るラインまでなんとか売価を調整していくでしょう。

なぜなら価格を上げても買ってくれなければ商売は成り立たないし、ライバル社だっている話ですから。

というわけで物価上昇の初期にあっては、実際には下図のような感じになるでしょう。

図2:物価をあまり上げられないパターン

この状態においては、賃金上昇など求るべくもありません。

つまり賃金は上昇せず、物価だけ上昇する「スタグフレーション」が起こります。いわゆる悪いインフレですね。

ここから各企業は、

「もうこれ以上は無理!原価上昇分、売価に転嫁させてもらいます!」

と、もう我慢ならず「実家に帰らせて頂きます!」と三下り半を叩きつける奥さんばりになって、そしてこのサイクルが少しずつ回り始めると、

「俺も俺も」

とばかり多くの商品・サービス価格は上がっていくでしょう。

売上点数が増えたわけでもないのに、商品単価だけが上がることによってお金がダブついてきます。

この結果、色々なものの” 円の表示値”が変わります。商品・サービスの値段だけでなく、給料の額面すら増えたように感じるかもしれません。

でもこれは結局、最初に見た図と同じであって、生活感は一切変わらないことに気が付きます。

働けど働けどなおわが暮らし楽にならざり、ぢっと手を見る

状態ですよ。

あれ?そういえばデフレからの脱却を大義名分に、持続的な物価上昇2%を目指すとか、GDP1000兆円を達成するとか言ってませんでしたっけ?

確か、こうなれば賃金も上昇しますよ~みたいな甘言を弄してましたよね。

でもこうしたことと、賃金の上昇とは直接関係ないですよね。見た目の価格の上下だけで中身は従来と何も変わらないからです。

インフレ率を上回る賃金上昇になる理由が全くない。

もちろん個々にみれば、勢いのある会社・業界などで賃金の上昇はあるでしょう。でもそれは、くどいようですがインフレ・デフレとは全く関係がない。全体的に、マクロ的にみると物価上昇率<賃金上昇率にはならないのです。

物価上昇率<賃金上昇率の世界

ではどういう時に物価上昇率<賃金上昇率になりうるのでしょうか?

ひとつの解としては、下記の図のような状態になり得れば、賃金上昇に結び付く可能性があります。

図3:付加価値がついた例

この商品の売価が100円から140円になった。今度は利益が青い部分上乗せされた。これは何でしょう?

便乗値上げ?(笑

もちろん単なる便乗値上げだと早晩お客さんに見限られて終わりでしょう。

ではもしこの商品に何らかの改善がなされて、以前より魅力的なものができたとしたらどうでしょう?これによって顧客から支持され、この価格でも喜んで買うとなったら、この青い部分は何と呼ぶべきでしょう?

私はこれを「付加価値」というべきだと思います。

この顧客から支持された対価としての付加価値が貯まってきて初めて、賃金に還元するということが起こるのではないでしょうか。

ここまできてやっとですよ。

でもこれはあるひとつの企業の、ミクロ的な話にすぎません。

社会全体が【物価上昇率<賃金上昇率】になるための最適な解は、実際にはよくわかっていないのです。

ひとつはこれから経済発展していく国であればそうなるであろうこと(高度経済成長期のような)、あるいは巨大テック企業のような経済を牽引するごく一部の企業・業界が全体の平均を押し上げること、くらいしか見当がつかないのが実情です。

じゃあなんで持続的な物価上昇なんか目指すのかというと、これは他国との関係性の兼ね合いからですね。

この現実世界において、購買力平価等が採用されず為替レートが固定的であると考えるのであれば、物価が上がらず・金利の上がらない日本と、物価が上がり・金利も上昇する他国との間で、日本は相対的に貧困化するためです。

購買力平価についてはこちらの記事をご参考に。

物価上昇時に気を付けること

さて閑話休題。

あらためて、物価が上昇して困ることを挙げてみましょう。

商品・サービスが値上がりすることで、消費支出が多くなる

他には、

現金、預貯金が実質目減りする

物価上昇したからといって、預貯金金利まで同じように上昇するわけではありません。そのためにはまだいくつかの段階を経なくてはなりません。また現金はインフレに対して抵抗力が皆無です。

しかしこの2番目の、預貯金が実質目減りしていくことに対しては、多くの方があまり意識が向いてないのですよね。

そりゃあそうですよね。バブル崩壊後は低金利化・低い物価圧力が続いてきてそれに慣れてしまっているし、特にいまの40代以下の人は、インフレの世界、金利が上昇する世界を本当には知らないのですから。

だからこそいま一度、インフレに対する家計防衛の意識を持つべきでと思います。そのためには、”インフレに強い資産”をある程度保有することが望ましい。

インフレに強い資産は種々あるものの、やはり長期でみれば株式でしょう。私たち普通の人々にとっては、株式投資信託に淡々と積立していくのが恐らく適切な方法となるでしょう。

さて今回はとりあえずここまでです。

物価上昇と一口にいっても、マイルドなインフレなのか、止めどなく上昇するインフレなのか、物価上昇初期のことか、あるいはそれ以後のことか等によっても話は全然違ってきます。また物価と金利は分けては考えられないので、ここについても考察する必要があります。

また近いうちにそれらについて書こうと思います。

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